【リレーブログ(13)】宇宙探査機ナビゲーターの日常

【リレーブログ(13)】宇宙探査機ナビゲーターの日常

皆様、こんにちは。

JPLでエンジニアをしています、高橋雄宇(ゆう)です。

このページに来たということは、みなさんもきっと小野さんの「宇宙に命はあるのか」を読まれた、もしくはこれから読もうという方だと思います。

僕もサイン入りのものをプレゼントしていただき、読了しました!

小野さんより直筆サインを頂きました。モチーフは勿論、Junoと木星!

宇宙を目指した人間たちのドラマが目の前で展開されているような、そんな感動を覚えました。

小野さんの宇宙への愛、そして畏れも感じる、そんな一冊でした。

僕が宇宙工学を勉強するきっかけになったのは2004年の火星ローバー(スピリット・オポチュニティー)の火星着陸でしたが、こんな本にその時出会えていたら良かったなと思います。

僕はJPLを目指し高校を卒業後すぐ渡米したのですが、正直な話、留学したての頃は英語を学んだり、毎日宿題に追われていて宇宙に想いを馳せることは全く無かったように思います。

大人の方は勿論、若い方にも是非読んで欲しいと思います。

 

さて、リレーブログということで、今日は僕の日常について書いてみたいと思います。

小野さんと同じJPLのエンジニアでも、僕のやっていることは全く違います。

ナビゲーションという、人口衛星の軌道を描く、そしてその軌道に乗せる、という仕事です。

現在はJuno(ジュノー)という、木星の周回軌道に乗っている衛星のナビゲーションをやっています。

軌道の話をする前に、Junoから送られて来たデータを元に作られた画像を見てください。

Credit: NASA/Juno – Snowstone

 

木星の大赤斑 Credit: Bjorn Jonsson

 

Human Curiosity (Credit: The Universe)

 

普段はコンピューターで計算を走らせる仕事しかしていませんが、こういった写真や科学データが宇宙の謎をまた解き明かしているのかと思いながら、充足感に浸ります。

そんな時にオフィスでビールを一杯… と行きたいところなのですが、残念ながらJPLの施設内は禁酒なので飲めません。本当に残念!

 

本題のナビゲーションですが、Junoは木星の周りを53日で一周します。

木星から一番遠いところで約800万km、そして木星に一番近いところでは標高3000kmぐらいまで近づきます。木星に一番近づいたところでのスピードは約秒速60km。そんなとてもつもないスピードで移動する衛星を正確にコントロールする、それが僕の仕事です。

Junoは極軌道(北極から南極へ行く軌道)に乗っているのですが、木星に32回近づき、経度を等間隔で通り過ぎます。その際に木星の磁場や大気の様子、その他にも重力を調べたりしています。

その重力計算がナビゲーションの醍醐味なのですが、僕はナビゲーションというのは星が奏でる音楽の中でダンスを踊るようなものだと思っています。

音楽は勿論惑星の重力、そしてダンスというのは衛星に備わっているエンジンを使ったり、惑星を回る月を利用して軌道変更することです。

ミッションは変わりますが、ここに去年約20年の命を土星にて終えた人工衛星、カッシーニの軌道を載せました。これでもかというくらい星の周りをぐるぐる回っていますが、これでもまだ全体の一部です。重力によってこんなにも美しく舞うことが出来るのかと、いつも見るたびに感動を覚えます。

 

Cassini Trajectory (Credit: NY Times)

 

少し長くなりましたが、今日はナビゲーションについて少しだけ紹介させて頂きました。

みなさんも今夜は夜空を見上げて、今この瞬間に木星や火星、さらにはボイジャーのように星間空間を舞う衛星がいるのかと、イマジネーションを膨らませて想像してみてください。