自腹で30万円払って新刊の雑誌広告を打った話〜出版不況における作家の役割とは?

自腹で30万円払って新刊の雑誌広告を打った話〜出版不況における作家の役割とは?

今日発売の二大天文雑誌「星ナビ」と「天文ガイド」に、新刊の広告を打ちました!両者とも自腹で、合計291,600円。星ナビは57ページ、天文ガイドは50ページに、1ページぶち抜きで掲載されています!

きっかけは父親でした。父は僕の本の発売日もタイトルも知らなかった。ネットではあらゆる方面へ拡散しているのですが、父のように望遠鏡を自分で作ってしまうほど根っからの天文ファンだけれどもネットには疎い人には届いていない。やはり、ネットには限界がある。父のような人にリーチするには、オールド・メディアに打って出るほかない。そう考えて思いついたアイデアでした。

(こちらが天文ガイドの請求書。星ナビの請求書はこれから届くそうです。)

雑誌広告に加え、全国の科学館や大学などで掲示/配布させてもらっているポスター・チラシの制作費約7万円と、このウェブサイトに使った有料ツール$69も自腹です。他にも色々やったので、全て合わせたら自腹で払った広告費は40万円程度でしょうか。よく妻が許してくれたものです(笑)

写真、コピーとおおまかなレイアウトは自分で作ったのですが、僕の読者コミュニティー「宇宙船ピークオッド」のメンバーにプロのデザイナーさんがいて、彼女がご好意で洗練されたクオリティーに仕上げてくれました。

印税収入は?

一方の印税はというと、今回の本は定価が800円、初版はかなり多めで17,000部、印税率が10%なので、 136万円。そこからエージェントのコルクさんの取り分30%と、コルクさんにかかった諸経費(ウェブ連載のロゴを作ってくれたアーティストさんにお支払いした謝礼など、金額は覚えていないが15万円ほどか)が引かれるので僕の取り分は約80万円。さらに税金を引いたらだいたい50万円強でしょうか。

ですから、赤は出ませんが、ほぼ初版の印税収入を使い切った感じです。

でも、それでいいと思っています。僕は副業作家です。本の収入に頼らずとも食い扶持には全く困りません。数十万の印税をちみちみと稼ぐ必要は全くありません。

そもそも本を書いたのは儲けるためではありません。読んでもらうためです。書いた言葉を受け取ってもらうためです。読んでもらわなくては、2年もかけプライベートの時間を削って書いた意味がありません。

広告費は出版社が払うべきなんじゃないの、と思われる方も多いかもしれません。出版社は読売新聞に広告を打っていただけるらしいですし、営業や広報の方もものすごく好意的に頑張ってくれています。

ただ、やはり無名作家の初版本に使える宣伝費は限られているようです。本が売れて重版がかかれば、もっと広告費を出してくれるとのこと。

すでに売れたものに広告費を出すなんて本末転倒じゃないか、と思われるかもしれませんが、出版社を責めることはできません。少し考えれば理屈はわかります。同じ広告費なら、1万部を5万部にするより、10万部を50万部にする方が費用対効果が良いのです 。

前の本の反省もあります。前作出版時は「作家の仕事は書くこと、出版社の仕事は売ること」と高をくくっていました。

そしてあまり売れませんでした。重版はかかっていません。

読んでくださった方からの評価は非常に高かった。25件アマゾン・レビューで平均4.1をいただいています。

そこから学んだのは、「良いものを書いても売れるとは限らない」という、当たり前の現実です。

もちろん、良いものを書かなくては売れません。ですから、今回も前回同様、渾身の力を込めて書きました。自分で言うのもなんですが、内容と言葉には絶対的自信があります。手に取ってくだされば、読み終えた後に本の値段以上の価値のある知識と感動とメッセージをお伝えできると自負しています。

でも、手に取ってもらえなければどうしようもありません。そして作家自身がやらなくては何も始まりません。出版社のせいにするのはカッコ悪い言い訳。どんなに良いものを書いても、売れなかったら作家自身のせいです。

そもそもどんなに自分で「良いものを書いた」と胸を張っても、売れなくては誰も相手にしてくれません。美にも感動にも値札がつけられる資本主義社会、良いか悪いかは別にして、売れるか売れないかが全て。それが、前作から得た教訓でした。

やれることは全てやる

ですから、今回は自分でやれることは全てやろうと思いました。自腹を切っただけではありません。このウェブサイトはWordpressを使って自分でゼロから作りました。サイン入りPOPを大量に作って書店への突撃営業もしました。 「サイン・シリアル番号入り限定200部の特別版」というキャンペーンも展開しました。先日のローンチ・イベントもコルクや出版社の方に大いに助けていただきましたが、内容の考案やチケット販売サイトのセットアップなどは自分でやりました。

とにかく、読んでほしいんです。ただその一心です。

でも、頑張っているのは僕一人ではありません。

読者の方が、広告のデザインだけでなく、原稿へのフィードバックから書店営業、チラシ配布、ウェブサイトのアドバイスまで、あらゆることを助けてくれています。前作や本作の元になったウェブ連載を読んで共感してくれた方たちです。まるで自分の本であるかのように熱心になってくれています。僕が方々で言っている「読者と共に作った一冊」というのは、決して誇張ではありません。

今のところ反響は上々です。2月1日より紀伊国屋新宿本店で行われた先行販売は3日で売り切れました。ローンチ・イベント60席と僕が販売した郵送分33冊も数日で完売しました。アマゾンのランキングも発売前であるにも関わらず1300位ほどまで上がっています。

もし「星ナビ」や「天文ガイド」を購入された方、ぜひ広告を見てみてください。そしてもし興味を持たれたら、立ち読みをしてみてください。本ウェブサイトの立ち読みコーナーでは、全体の約4分の1弱に当たる62ページを立ち読みできます。

どうか騙されたと思って最初の10ページだけでも読んでください。もしそれでつまらないと思ったらいいです。でも、面白いと思っていただける自信があります。

とにかく読んで欲しい。「良いものを書いたのに売れなかった」なんてカッコ悪い言い訳をしたくない。

発売はいよいよ明日です!

(地方では書店に並ぶのが数日遅れるかもしれません。)