日本が絶好の位置にあった皆既月食。神秘的な天体ショーを見ながら、なぜ皆既月食は月が赤くなるのか、疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。
月食とは月が地球の影に入ることです。ならば単に黒くなるはずでは?そう思われるのではないでしょうか。
この現象を理解するために、地球で皆既月食が発生している間に月から地球を見たらどう見えるか、想像してみましょう。
地球は太陽を完全に隠しています。月から見えるのは地球の夜側ですから、地球は基本的に真っ暗ですが、都市の街明かりが見えるかもしれません。
しかし、単に黒い球ではなりません。それが、赤いオーラに包まれているように見えるのです。その赤い「オーラ」の光が月を赤く照らすので、皆既月食は赤い。
しかし、この赤い「オーラ」の正体はなんでしょうか?
Image: NASA
朝焼けと夕焼けです。皆既月食時、月から見た地球の縁は全て夜と昼の中間にあります。つまり朝と夕方です。その朝焼けと夕焼けの光が、「オーラ」のように見えているのです。(専門的に言えば、地球の縁で大気を透過する太陽光のうち青い光が散乱されて赤い光のみが月に届くためです。)
つまり、皆既月食が赤いのは、地球の朝焼けと夕焼けを映しているからなのです。しかも、地球一周4 万km分の夕焼けを。
ちなみに、地球から見て新月の時に月から地球を見上げたら、これもさぞ美しいに違いありません。月の銀色の砂漠が、地球の青い光に淡く照らされます。世界の全ては淡く青く、そこにあなたの影が黒く落ちます。
ちょうど来週火曜日に発売の本に、こんな一節を書きました。
赤いオーラに包まれる漆黒の地球。青い光に包まれた銀色の月の沙漠。まだ誰も、見た人はいません。それを最初に目撃する人類は、誰になるでしょうか。